白衣の天使なんていない

「看護師さんって、白衣の天使って言われるぐらいいつも優しいですよね」

年配の患者さんからそう言われるたびに、少しだけ返事に困ります。

たしかに、患者さんの前では笑顔でいたいです。

つらいときには話を聴きたいですし、不安な気持ちに寄り添いたいと思っています。

でも実際の僕たちは、いつも穏やかに微笑んでいるわけではありません。

汗をかきながら病棟を走り回り、

排泄物の処理を秒で終わらせ、 

次の点滴の時間を気にしながらナースコールに向かいます。

ようやく一息つけると思ったところで、別の患者さんの状態が変わります。

心の中では常に

「ちょっと待ってよー」

と思っています。

待たせたくない。でも、今すぐには行けない。

本当の白衣の天使なら、

常に笑顔で呼ばれたところへ行き、

患者さんのニードに答えられるはずなのに…。

そこにいるのは、時間に追われ、

迷い、焦り、

それでも患者さんのために動こうとしている、一人の人間です。

目次

  1. 「優しくしたい」のに、余裕がない
  2. それでも、この仕事を続けたいと思う瞬間があります。
  3. やりがいがあるからといって、しんどさが消えるわけではありません。
  4. ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

「優しくしたい」のに、余裕がない


看護師になったころ、僕にも思い描いていた姿がありました。

患者さんのそばに座って、ゆっくり話を聴く。

小さな変化にも気づき、苦痛を少しでも早く和らげる。

忙しいときほど落ち着いて、誰に対しても優しく接する。

今も、その看護を大切にしたいと思っています。

けれど現場では、患者さんの話を聴いている途中で呼ばれることがあります。 

続きを話したそうな表情を見ながら、

「また来ますね」と席を立つこともある。

「今度はゆっくり聴こう」

そう思ったまま、勤務が終わる日もある。

優しくしたくないわけではありません。

寄り添う気持ちがないわけでもありません。

ただ、一人の看護師が同時にできることには限りがあります。

それでも、できなかった場面ばかりを思い出してしまいます。

もっと話を聴けたんじゃないか。

あのときの言い方は冷たくなかったか。笑顔が足りなかったんじゃないか。

患者さんには見せなかった焦りや疲れが、帰り道になって押し寄せます。

笑顔の裏には、たくさんの「必死」があります

看護師の仕事は、きれいな場面だけではできていません。

排泄介助の途中で別の部屋からナースコールが鳴ります。

汗を拭く間もなく体位を整え、記録の途中で薬の確認に向かいます。

食事を取る時間を逃して、気づけば勤務終了の時刻を過ぎています。

患者さんから「ありがとう」と言われても、

笑顔で「いえいえ」と返しながら、

頭の中では次にやることを数えている日があります。

先輩に声をかけるタイミングを探し、

報告の言葉を組み立て、

自分の判断に不安を抱えながら動いている新人看護師さんもいるでしょう。

誰にも見えないところで、泣いたことがある人もいると思います。

「看護師なんだから、いつも優しく」

その言葉が、苦しく感じる日があってもいいのです。

疲れて余裕をなくすことと、

患者さんを大切に思っていないことは、

同じではないからです。

もちろん、

忙しさを理由に何をしてもいいわけではありません。

きつい言い方をしてしまったら、

振り返って次につなげたいと思います。

でも、その振り返りを

「自分は看護師に向いていない」

という結論にしなくていいのです。

必要なのは、自分を責め続けることではなく、

明日の自分が少しでも落ち着いて働けるように考えることです。

それでも、続けたいと思える瞬間があります

ここまで読むと、

「そんなにしんどいなら、なぜ看護師を続けるの?」と思うかもしれません。

僕も、何度も考えました。

疲れ切って帰る日があります。

頑張ったつもりでも、

できなかったことばかりが残る日があります。

もう少し余裕のある仕事だったら、

と考えることもあります。

それでも、この仕事を続けたいと思う瞬間があります。

痛みが和らいで、患者さんの表情が少し緩んだとき。

不安で眠れなかった人が、

話をしたあとに「少し安心した」と言ってくれたとき。

昨日はベッドから起き上がれなかった人が、

今日は自分の足で一歩進んだとき。

「あなたがいてくれてよかった」

その言葉をもらえる日は、そう多くありません。

感謝の言葉がなくても、

自分の関わりが役に立ったのか分からない日だってあります。

それでも、

患者さんの苦痛を一つ減らせたかも。

異変に気づいて次の対応につなげられたかも。

怖がっていた家族の話を数分でも聴けたかも。 

そんな小さな手応えが、僕をもう一度現場へ向かわせます。

やりがいがあるからといって、しんどさが消えるわけではありません。


それでも、

「この仕事をしていてよかった」

と思える瞬間も確かにあります。

僕は、その両方を大切にしていたいです。

「天使」ではなく、一人の看護師として

僕たちは、疲れない天使にはなれません。

いつも笑顔で、誰の話も十分に聴けて、

どんな場面でも迷わず動ける。

そんな看護師を目指し続けたら、

いつか自分を追い詰めてしまいます。

目指したいのは、完璧な人ではありません。

疲れたら疲れたと認める。

困ったら周りに相談する。

うまくできなかった日は、次にできることを一つ考える。

そして患者さんの前に立つときには、その人に今できることを誠実にする。

一人で抱え込まないことも、

看護を続けるために必要な力だと思います。

もし今、

「理想の看護師になれていない」

と苦しくなっているなら、

今日の勤務を少し思い返してみてください。

ナースコールに応えた。

患者さんの変化を報告した。

忙しい中でも、名前を呼んで声をかけた。

つらそうな表情に気づいた。

当たり前に見える一つひとつを、あなたは今日もやっています。

できなかったことを振り返るのと同じくらい、

できたことにも目を向けてほしいです。

汗まみれでも、

白衣が汚れていても、

余裕のない一日だったとしても。

その姿は、理想から遠いわけではありません。

懸命に働いている看護師の、現実の姿です。

白衣の天使なんていません。


だけど、

しんどさを抱えながらも

患者さんのそばに立ち続ける看護師がいます。

僕はそんな看護師たちを、

心から尊敬しています。

そして明日も、 

自分にできる看護を一つずつ重ねていきたいです。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。


僕はInstagramで、

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つらい日に少し心が軽くなる言葉を発信しています。

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