はじめに
新人看護師の仕事が終わらないのはなぜ?
「今日も仕事が終わらない……」
記録は残っている。
やろうと思っていた処置も終わっていない。
先輩から「あれ終わった?」と聞かれて、忘れていたことに気づく。
一方で同期を見ると、自分より仕事が進んでいる。
「なんで自分だけ仕事が遅いんだろう」
新人看護師の頃、こんな悩みを抱える人は少なくありません。
朝にスケジュールを立てても予定通り進まない。
ナースコールに対応していたら、予定が全部ズレる。
一つの仕事をしている間に、別の仕事を忘れてしまう。
そして先輩から言われるのが、
「もっと優先順位を考えて」
「先のことを考えて動いて」
という言葉です。
でも新人側からすると、
「それができるなら困ってないよ……」
というのが本音ではないでしょうか。
新人看護師がスケジュール管理を苦手とするのは、単純に「要領が悪いから」ではありません。
看護師の仕事は、そもそもスケジュール管理が難しい仕事です。
複数の患者さんを受け持ちながら、検査、点滴、内服、処置、清潔ケア、食事、リハビリ、記録など、さまざまな業務を同時に進めなければなりません。
さらに、ナースコール、患者さんの状態変化、突然の検査、医師からの追加指示、家族対応、入退院など、予定外の出来事も次々に入ってきます。
特に緊急入院は、看護師なら誰もが経験する予定外の横入り業務です。
つまり看護師に必要なのは、予定を立てる能力だけではありません。
状況に合わせて、予定を組み替え続ける能力も必要なのです。
経験の少ない新人看護師が、最初からこれを完璧にできないのは当然です。
ここでは、新人看護師の仕事が回らなくなる主な理由を5つ紹介します。
目次
- はじめに
- 新人看護師の仕事が終わらないのはなぜ?
- 理由1:仕事にかかる時間を予測できない
- 理由2:すべての仕事が同じくらい重要に見える
- 理由3:目の前の仕事だけで精一杯になる
- 理由4:予定が崩れたあとに立て直せない
- 理由5:全部自分でやろうとしてしまう
- まとめ:仕事が回らないのは、能力がないからではない
理由1:仕事にかかる時間を予測できない
先輩看護師なら、
「この清潔ケアなら20分くらい」
「この処置は10分くらい」
と、経験から業務にかかる時間をある程度予測できます。
しかし新人看護師には、まだその経験がありません。
10分で終わると思っていた処置に30分かかる。
予定より時間がかかり、次の業務が遅れる。
その結果、さらに次の予定もズレていく。
このように、一つの業務の遅れが連鎖して、勤務全体が回らなくなってしまいます。
これは、時間管理能力が低いというよりも、「自分がどの業務にどれくらい時間を使うのか」をまだ把握できていないことが大きな原因です。
僕自身、新人の頃に、あと10分で検査出しをする患者さんを受け持っていたにもかかわらず、別の患者さんの全身清拭に行こうとしたことがあります。
そのとき先輩から、
「君は自分が清拭に何分かかるかわかってる?」
と言われました。
その言葉で、自分は業務の内容だけでなく、かかる時間まで考えなければいけないのだと気づきました。
新人のうちは、一つの業務にどれくらい時間がかかるのか分からないため、予定を詰め込みすぎたり、次の予定に間に合わない業務を始めたりしてしまいます。
理由2:すべての仕事が同じくらい重要に見える
採血、点滴、清潔ケア、検査、内服、ナースコール、記録、患者さんからの依頼。
新人時代は、どれも同じくらい大事に見えます。
そのため、
「何を先にやればいいの?」
と混乱してしまいます。
先輩看護師は、業務を見た瞬間に、
「これは今すぐ対応する」
「これは少し後でも大丈夫」
「これは誰かに相談したほうがいい」
と判断しています。
しかし新人は、すべての業務を同じ重さで受け止めてしまいがちです。
その結果、急ぎではない業務に時間をかけてしまい、本当に時間が決まっている検査や処置が後回しになることがあります。
スケジュール管理が上手な看護師は、単純に仕事が速いわけではありません。
「今、何を優先するべきか」を判断する力が優れているのです。
新人のうちは、業務の緊急性や時間制限がまだ十分に分かりません。
そのため、優先順位をつけられず、目の前にある仕事から順番に取り組んでしまいます。
これが、仕事が回らなくなる大きな原因になります。
理由3:目の前の仕事だけで精一杯になる
先輩にとって当たり前にできる業務でも、新人にとっては多くのことを考えながら行う必要があります。
例えば、点滴一つでも、
患者確認。
薬剤確認。
投与速度。
ルート。
刺入部。
指示内容。
観察項目。
さまざまなことを確認しなければなりません。
一つの業務を安全に行うだけで、頭の中はいっぱいになります。
そのため、点滴に集中している間に、
「10時から検査だった」
「別の患者さんの点滴交換を忘れていた」
ということが起こります。
これは注意力がないというより、目の前の業務をこなすことで精一杯になっている状態です。
新人の頃は、処置やケアの一つ一つに時間がかかります。
手順を確認しながら動き、患者さんの反応を見ながら進めるため、どうしても時間が必要です。
その間に、他の患者さんの予定やナースコールへの対応を考える余裕がなくなってしまいます。
先輩看護師は、経験によって一つ一つの業務を半ば無意識に進められます。
だからこそ、周囲の状況や次の予定にも目を向けられます。
一方、新人は一つの業務に集中しなければならないため、全体を見ることが難しいのです。
理由4:予定が崩れたあとに立て直せない
朝に完璧な予定を作っても、その通りに終わる日はほとんどありません。
9時に清潔ケアをしようとしたらナースコールが鳴る。
対応している間に、医師から追加指示が出る。
その後、患者さんの検査時間が変更になる。
このように予定外の出来事が重なると、
「もう何からやればいいか分からない」
となってしまいます。
新人看護師は、朝に立てたスケジュールを守ろうとする傾向があります。
しかし、看護師の仕事では、予定通りに進まないことのほうが多いものです。
一つの業務が遅れたときに、どの予定を後ろに回すのか。
どの業務を先に行うのか。
誰かに相談する必要があるのか。
こうした判断ができないと、予定が崩れたまま時間だけが過ぎていきます。
仕事ができる先輩も、朝の予定通りに動いているわけではありません。
状況が変わるたびに、
「これは後にしよう」
「こっちを先にやろう」
と、何度も予定を組み直しています。
新人は、予定を変更することに慣れていないため、一度スケジュールが崩れると、その後の行動まで止まってしまいます。
理由5:全部自分でやろうとしてしまう
新人看護師ほど、
「人に頼んだら迷惑かな」
「自分の受け持ちだから、自分でやらないと」
と考え、仕事を抱え込んでしまいます。
11時の検査搬送と処置が重なっていても、誰にも相談せず、自分一人で何とかしようとする。
ナースコールが続いても、周囲に応援を頼まず、自分だけで対応しようとする。
その結果、どちらの業務も遅れてしまうことがあります。
しかし、病棟看護は一人で完結する仕事ではありません。
複数の看護師が協力しながら、患者さんの安全を守っています。
自分の受け持ち患者さんであっても、すべての業務を一人で行わなければならないわけではありません。
「検査と処置が重なりそうなので、こちらをお願いできますか?」
「患者さんの状態変化への対応で、予定していたケアが遅れています」
と相談することも、看護師に必要な能力です。
新人看護師は、助けを求めることを「できない人だと思われること」と捉えてしまうことがあります。
しかし、実際には、仕事の状況を伝え、必要な支援を求めることもスケジュール管理の一部です。
全部自分でやろうとするほど、仕事は回らなくなります。
まとめ:仕事が回らないのは、能力がないからではない
新人看護師の仕事が回らない理由は、単純に仕事が遅いからでも、要領が悪いからでもありません。
主な理由は、次の5つです。
1. 業務にかかる時間を予測する経験が少ない
2. すべての仕事が同じくらい重要に見える
3. 目の前の業務だけで精一杯になる
4. 予定が崩れたあとに立て直せない
5. すべてを自分でやろうとしてしまう
このように、看護師として働くために必要な複数の能力が、まだ身についている途中だからです。
新人時代は、一つの業務を覚えるだけでも大変です。
そこに複数の患者さんの予定、時間管理、優先順位、急な対応まで加わるため、仕事が回らなくなるのは自然なことです。
毎日仕事が終わらない。
同期より遅い。
先輩から「もっと優先順位を考えて」と言われる。
そんな日が続くと、
「自分は仕事ができないのかもしれない」
と思ってしまうかもしれません。
でも、スケジュール管理には、時間の予測、優先順位、先読み、予定変更への対応、周囲との連携など、さまざまな能力が必要です。
今できないからといって、これからもできないわけではありません。
まずは、自分がどの理由で仕事を回せなくなっているのかを知ることが大切です。
原因が分かれば、必要な対策も見えてきます。
スケジュール管理は、最初から完璧にできるものではありません。
毎日の勤務の中で経験を重ね、少しずつ身につけていく力です。
今日うまく仕事が回らなかったとしても、
「自分は仕事ができない」
で終わらせるのではなく、
「今日はどの場面から予定が崩れたのか」
と振り返ってみてください。
仕事が回らない理由に気づくことが、スケジュール管理を身につけるための最初の一歩になります。

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