看護師のフィードバックは、なぜ「できていないこと」ばかりなのか?

はじめに

「ここ、できてなかったよ」

「なんで確認しなかったの?」

「もっと優先順位を考えないと」

新人看護師として働いていた頃、こんなフィードバックを受けた経験はありませんか?

もちろん、患者さんの安全を守るためには、できていないことを伝える必要があります。

間違ったことを「まあいいか」で終わらせるわけにはいきません。

でも、僕はずっと疑問に思っています。

なぜ看護師のフィードバックは、「できなかったこと」ばかりなのでしょうか。

その日、できたこともあったはずです。

患者さんの変化に気づけた。

昨日できなかった処置ができた。

分からないことを自分から聞けた。

忙しくなる前に先輩へ相談できた。

患者さんに丁寧に声をかけていた。

それなのに、できたことはスルーされて、できなかったことだけを指摘される。

そんな毎日が続けば、

「今日もできなかった」

「自分は仕事ができない」

「看護師に向いていないのかもしれない」

と思ってしまうのも無理はないと思います。

目次

  1. はじめに
  2. そもそも「フィードバック」とは何なのか?
  3. 人は「できていない」だけでは頑張り続けられない
  4. 「できた」を伝えることで自己効力感が育つ
  5. 「すごいね」と褒める必要はない
  6. 「できなかった1つ」の前に「できた1つ」を見つける

そもそも「フィードバック」とは何なのか?

フィードバックとは、

相手の行動や結果について情報を返し、次の行動や成長につなげること

です。

つまり、

フィードバック=できていないことを指摘すること

ではありません。

できていなかったことを伝えて、

「次はこうしてみよう」

と改善につなげることもフィードバック。

同じように、

「今の観察は良かったよ」

「早めに相談できていたね」

「患者さんへの説明が分かりやすかったよ」

と、できていた行動を伝え、

「次も続けよう」

と思ってもらうことも立派なフィードバックです。

ところが看護の現場では、前者に偏ってしまうことがあります。

その背景には、医療がミスを見逃せない仕事であることも関係していると思います。

「できなかったことを改善させなければ」

「間違ったまま覚えさせてはいけない」

そう思うからこそ、指導する側もできていない部分に目が向く。

それ自体は悪いことではありません。

問題なのは、

「できていることは、できて当たり前」になってしまうことです。

人は「できていない」だけでは頑張り続けられない

例えば、新人看護師が10個のことに取り組んで、8個できて2個できなかったとします。

でも勤務終了後に言われたのが、

「ここができてなかった」

「これは次から気をつけて」

という2つだけだったらどうでしょう。

本人に残るのは、

「今日も私はできなかった」

という感覚かもしれません。

これが毎日続けば、

「どうせまた怒られる」

「何をやっても認めてもらえない」

「私はこの部署に必要ないのかもしれない」

と思うようになってしまいます。

そして最終的には、

「もう看護師を辞めたい」

につながってしまうことだってあります。

新人看護師が成長するために必要なのは、「できない自分」を毎日確認することだけではないはずです。

「自分にもできる」

と思える経験も必要です。

「できた」を伝えることで自己効力感が育つ

昨日できなかったことが、今日はできた。

患者さんの変化に自分で気づけた。

先輩に言われる前に行動できた。

そんなとき、

「今の良かったよ」

と誰かが気づいてくれる。

すると、

「自分にもできるかもしれない」

と思えるようになります。

これが自己効力感につながっていきます。

そしてもう一つ、大切なのが、

「自分をちゃんと見てもらえている」

という感覚です。

できなかったことだけではなく、できるようになったことにも先輩が気づいてくれる。

それだけでも、

「ここにいてもいいんだ」

「ちゃんと自分のことを見てもらえている」

と思えることがあります。

僕は、こうした関わりが新人看護師の心理的安全性を支える一つの要素になると思っています。

「分からない」と言える。

「助けてください」と言える。

失敗したときも隠さず報告できる。

そんな職場をつくるためにも、できているところを見る文化は大切なのではないでしょうか。

「すごいね」と褒める必要はない

ここで勘違いしたくないのが、

何でも褒めればいいわけではない

ということです。

「すごいね!」

「さすが!」

「頑張ってるね!」

もちろん、こうした言葉もうれしいと思います。

でも僕がもっと大切だと思うのは、

実際の行動に対して、具体的に良かったところを返すことです。

「患者さんがいつもより元気がないことに気づけたの、良かったよ」

「忙しくなる前に相談できていたね」

「昨日伝えたところ、今日は自分で確認できていたね」

「患者さんが不安そうなのを見て、説明の仕方を変えていたの良かったよ」

これなら単なるお世辞ではありません。

本人が実際にできていたことを、そのまま返しているだけです。

でも、その一言によって新人は、

「自分のこの行動は良かったんだ」

と知ることができます。

そして、

「じゃあ次もやってみよう」

と思える。

これこそ、フィードバックの大切な役割ではないでしょうか。

「できなかった1つ」の前に「できた1つ」を見つける

もちろん、できていないことを伝える必要はあります。

患者さんの安全に関わることなら、なおさらです。

でも、

改善点を伝えることと、できていることを認めることは両立できます。

「ここはできていたよ。でも、ここは次からこうしてみよう」

それだけでも、受け取る側の感じ方は大きく変わると思います。

新人看護師が欲しいのは、何をしても褒めてくれる先輩ではありません。

自分のことをちゃんと見てくれて、

できたことは「できていた」と伝えてくれる。

間違っていることは「ここは直そう」と教えてくれる。

そして困ったときには、

「一緒に考えよう」

と言ってくれる。

そんな先輩なのではないでしょうか。

できなかったことだけを探す職場ではなく、

できるようになったことにも気づける職場へ。

「今日もダメだった」

ではなく、

「今日はこれができるようになった」

と思って家に帰れる新人看護師が増える。

「自分は看護師に向いていない」

ではなく、

「まだできないことはある。でも、少しずつ成長している」

と思える。

そして、

「もう少しここで頑張ってみよう」

と思える。

そんな看護の現場が増えてほしいと思っています。

明日、後輩や新人看護師と一緒に働く人がいたら、

できなかったことを伝える前に、一つだけ探してみてください。

「今日、この人ができていたことは何だろう?」

そして見つけたら、その行動をそのまま言葉にして返してみてください。

その何気ない一言が、

誰かの「看護師を続けたい」を支える言葉になるかもしれません。

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